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11.ムエタイの夜 その2
 で、肝心のムエタイです。
 まず驚いたのは、試合そのものよりも、会場の雰囲気。まさに異様な盛り上がり方でした。打撃が入るごとに、まるで合いの手をいれるがごとく、観客が掛け声を上げます。やはり、


 お金を賭けている


せいでしょうか。殺気めいたのもが観客席からもビンビンつたわってきます(一応、賭博は違法行為です)。
 試合中は、笛(蛇使いの笛のような音がする)とスモールシンバル、太鼓の生演奏が流れており、異様な雰囲気に拍車をかけます。


 試合前に祈りをささげる選手。

 試合のほうですが、強力な蹴り技があるため、「ボクシングよりもKO率が高い」とガイドブックにも書いてあったので、楽しみにしていたのですが、実際に試合を見てみると、実はKOはかなりでにくいということが分かりました(隣にいた日本人の格闘技通の方からいろいろと解説してもらいました)。
 まず、1ラウンド3分で5ラウンドまで、そして、ラウンド間のインターバルが2分あります。ボクシングは1分なので、長く休める分回復できますから、KOしにくい。
 そして、一番の理由が、クリンチ状態からの膝(ひざ)蹴りが、判定の際にポイントが高いことです。ボクシングですと、クリンチ(接近しすぎて組み合った状態になること)になった場合は、そこで試合を一時中断し、レフリーが両者を引き離して、試合再開となるのですが、ムエタイの場合は、クリンチになっても試合はそのまま続行、そこから相手の腹めがけて、壮絶な膝蹴りの応酬が始まります。そして、このボディへの膝蹴りが、判定の際に高ポイントとなるそうです。
 これはこれで非常に見ごたえがありますが、やはりKOは頭部への打撃が入らないとなかなか発生しません。ポイントの高い膝蹴りを狙うことが多いため、KOが出にくいのでは、と隣にいた格闘技通の方がおっしゃっていました。クリンチ、ボディへの打ち合い、ともに体力を消耗しますから、ムエタイはスタミナ勝負の要素が強い競技かもしれません。
 一晩で計10試合が組まれていて、そのうち5試合ほど観戦しましたが、KOは一回もありませんでした。


 組み合った状態から、膝で相手の腹部を
 突き上げます。
 8試合目にメインイベントが組まれていて、特等席の外国人観光客は、メインイベントの勝者と2SHOTで写真を撮らせてもらえました。試合直後で、顔は腫れ上がり、汗びっしょりの選手をこんなことにつき合わせて、なんだか申し訳ない気分になりました。


 写真撮影に行く途中、どうみても小学校高学年〜中学生くらいの少年が、会場の隅で、トランクスをはいて、上半身裸で座っているのを見かけました。まさかこんな男の子が試合をするの? と思いましたが、写真撮影を終えて席に戻ると、案の定、さっきの少年がリングにあがっていました。
 我々の常識ですと、


 児童虐待


じゃないかと、胸が少々痛む気持ちもあるのですが、そんなことを考えるのははっきりいってナンセンスでしょう。ムエタイはタイの神聖なる国技。そのリングにあがれることは、本人にとっても家族にとっても、大変名誉のあることなんでしょうから(もちろん、選手の多くはタイ北部の貧しい地域の出身であるという現実はあります)。我々の常識を勝手に押し付けてはいけない、と、ここはあえて開き直って、試合を楽しむことにしました。
 ただ、リングサイトには、コーチがたくさんいて、盛んに声援をおくっていたんですが、その中に、一人だけ女性がいて、しかもよく見ると


 目を真っ赤


にしています。おそらくは、お姉さん、あるいはお母さんでしょうか。年端もいかぬ家族がリングにあがることを心配する気持ちは変わらないのかな、と、少し安心してしまいました。
 メインイベントが終わってしまった後ということもあり、観客もだいぶ減り、さっきまでの盛り上がりがうそのようでしたが、試合の内容は立派なもの。体の線はさすがに細いですが、技の切れ、そしてなにより、鋭い眼光から放たれる


 殺気


は、メインイベントの選手にもひけをとらなかったです。
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